【完】終わりのない明日を君の隣で見ていたい


 とぎ終えたお米を持って調理台に戻ると、すさまじい勢いで具材を切っていた大出さんがいきなり話を振ってきた。

「森下さん、どう思う? さきちゃんとられて、なんか悔しくない?」
「えっ」

 どうやら大出さんの怒りは少しも収まっていなかったらしい。
 いきなり先生の話題を振られ、わかりやすくたじろいでしまう。

「う、ううん、やっぱりショックだよね」
「だよね~!」
「大出さん、先生のこと大好きなんだね」
「うん。大好きっていうか、尊敬してるんだよね」
「尊敬?」
「私、さきちゃんが担任だってわかった時、正直この人が担任かってちょっとショックだったんだ。生徒のこと見下してるっていうか、スカした人なんだろうなって勝手に思ってたから」

 先生親衛隊の大出さんから飛び出た思いがけない言葉に、わたしはジャガイモの皮を剥く手を思わず止めた。
 けれど玉ねぎを切りながら記憶を語る大出さんは、そんな気配をきっと感じながらも、手と口を止めなかった。