「勘違い、じゃないかな」
目をそらしつつむりやり笑顔を取り繕ったその瞬間、プチンとなにかが切れたかのように皇くんが声を張りあげた。
「嘘つくんじゃねぇ! わかるんだよ! あんたのことが好きだから!」
「え……?」
前触れもなく突然ぶつけられた告白に、思わず目を見開いた。最近仲良くなれたとは思っていたけれど、まさか好意を寄せられていたなんてこれっぽっちも思いもしなかった。
立ち尽くしているわたしに歩み寄ると、皇くんは両手でわたしを抱きしめた。
「だから俺はいくらでも弱ってるところにつけ込むし、奪えるもんなら奪ってやるつもりだ」
せり上がってきた心臓に喉を圧迫されているみたいに声がでない。早打ちする自分の鼓動の音が鼓膜に響いてくる。
そんなわたしを追い込むかのように皇くんは抱きしめる腕にさらに力をこめた。
「あいつなんかじゃなくて俺にしろよ」
いつもよりも低くてダイレクトに耳に届く声が、心臓を揺らした。
目の前に差し出されたこの手を掴んだら、幸せになれるだろうか。先生への想いはなかったことにできるのだろうか。