まだSHR中のクラスが多く、廊下はがらんと静まりかえっていた。そこに響くサンダルの足音がふたつ。

 皇くんは長い廊下を脇目も振らずに進み、廊下の突き当たりの曲がり角を曲がったところで立ち止まった。そしてわたしを睨みようにしながらこちらを振り返る。

「――あんた、」
「え?」
「なんかあっただろ」

 続けられた言葉は紛れようもないほどに図星で、咄嗟に否定の言葉を引っ張り出す。心配されたくないし、なにより本当のことなんて言えるわけがない。

「な、ないもないよ」

 途端に皇くんは瞳に苛立ちの暗い闇を宿らせ、その目を眇めた。まるでなにか地雷を踏んでしまったかと思うほど、表情に現れる不機嫌を隠そうとしない。

「は?」