そして高校にあがり少し経った頃、俺に告白してきたのが梅子だった。
『つ、つつつつ、付き合ってくれませんか』
高校の帰り道。告白をされたあの日から、俺の人生は始まったようなものだ。
告白を受け入れた理由は至極簡単。その時付き合っている相手がいなかったからだ。梅子自身に興味はなかった。梅子が俺に飽きるまでのちょっとした暇つぶし。その程度にしか考えていなかった。
けれど付き合って間もない頃。俺は待ち合わせ場所に予定よりも早く到着している梅子を見つけた。
『て、て、テストお疲れ様!』
だれもいない壁に向かって、そう声をあげる梅子。
『て、てて、テストお疲れ様……!』
吃音のせいでうまく話せないことを、梅子は気にしていた。それで、俺が来る前に何度も練習していたらしい。うまくいかず、ごしごし涙を拭いながらも諦めず何度も練習をする姿を目撃して、ただの内気でか弱い子という印象が変わった。