すると、賑やかでまったりとした空気が流れるカフェの中。先生は静かに息を吐き出すみたいに、そっと声を落とした。 「恋人は10年前、俺のせいで死んだんです」 「え……?」 思わずこぼれた声が、松尾先生のものだったのかわたしのものだったのかは分からなかった。 先生の声に、頭の中で封印していた記憶の蓋が開いた気がして、わたしは目を見開いていた。 「川に身を投げて。自殺、でした」