なぜか病人に仕立て上げられ、あれよあれよという間にレストランを出たわたしは、先生の背中を追って歩く。
「お大事にー!」「お疲れ!」などと心配そうに見送ってくれるクラスメイトの中、皇くんはなにか言いたそうな顔でわたしを見ていた。
けれど、わたしとキスしなければいけない状況を回避できたのだから、皇くんにとってもよかっただろう。
空気の澄み切った夏の夜道。
先生に言われるまま出てきたけれど、部屋は違えど帰り道が一緒だったことに、歩きだしてからようやく気づいた。
闇夜に溶けてくれない気まずい雰囲気に、必死に当たり障りのない話題を絞り出そうとする。触れていいラインと、触れるべきではないラインが分からない。
「先生、あの……」
おそるおそるかけた声に、先生がいきなり立ち止まって、ずっと溜まっていた怒りが爆発したというように開口一番声を張りあげた。
「ったく、お前は隙がありすぎる!」
「はいっ……」
本気で叱られ、思わず首を竦める。