「そう、残念、付け込めると思ったのに」

 「アンタなら私より良い人見つかるから」と立ち上がってスタッフルームに向かった。

 「だから『やめときなさい』って言ったでしょ?」とカウンターの中から二人の様子を見て見ぬふりをしていたママが声をかける。

 「今なら落ちると思ったのになー」と頬杖をつき足をぶらつかせる。

 バタンとスタッフルームのドアが開き、誠司が勢いよく出た。

 「ママ帰っていい?」と慌てた様子で。

 「どうしたの?」

 「梨沙子が出張から帰ってきてるみたいなの」

 「けど『イブ』には帰らないって?」

 「コレ聴いて」とスマホの留守録を聴かせる。

 〈もっしもーし…あーそっかー今の時間でないと言う事はお店かなあーぁ残念、直接話せると思ったのに、仕事が早く終わったので今から日本に帰ります………Merry Christmas誠司…あっ、愛してるよ〉