何をしているのか、とても気になる。でも寝室からは出ない。だって、アレッサンドロさんに「ここにいて」って言われたから。終わるまで待とう。待つのは、いつの間にか上手になっていた。

「桜」

ドアが開き、アレッサンドロさんが入ってくる。手を引かれ、リビングに行くといつもとはガラリと雰囲気が変わっていた。

リビングは、ペーパーフラワーやリボンで飾られて華やかになっている。そしてテーブルの上には、普段は絶対に買わない高級なワインとたくさんのおしゃれな料理が置かれている。花瓶には新しい花が飾られていた。美しい真紅のバラの花だ。

「アレッサンドロさん、これって……」

訊ねると、アレッサンドロさんは覚悟を決めたように微笑む。そして、私の両手を包んで目をまっすぐに見つめた。

「桜、待たせてごめんね。僕と結婚してください」

それは、私がずっと願っていた言葉で、返事をしなければいけないはずなのに先に涙がこぼれていた。

「桜が、ずっとこの言葉を待ってるって知ってたんだ。言えなくてごめんね」