「ふざけんなよ!!」

瑠奈ちゃんが私を殴ろうとする。しかし、その手は誰かに掴まれた。

「仕事が早く終わって来たんだけど、どうしてこんなことになっているんですか?」

瑠奈ちゃんの手をアレッサンドロさんがしっかりと掴んでいる。その目は、いつもより鋭さがあった。

でも、言っていいのかな?私が迷っていると、「アレッサンドロさ〜ん!」と瑠奈ちゃんがアレッサンドロさんに甘い声を出していた。

「私、アレッサンドロさんのことが好きなんですぅ〜!付き合ってください〜」

アレッサンドロさんは私を見つめ、微笑む。そして瑠奈ちゃんを人に向けたことのない冷たい目で睨んだ。

「僕は、あなたのような人とは付き合いません。僕が愛しているのは桜だけです」

そう言った後、アレッサンドロさんは私を抱きしめる。耳元で「気付けなくてごめんね」とささやかれ、耳がくすぐったい。

「な、何よ!!」

瑠奈ちゃんは怒りで顔を赤くしてカフェから出て行く。私とアレッサンドロさんは、黙って抱きしめ合っていた。