あちらこちらで小さな異変が起きている。
ネプチューン王国の守人と同じ役目をするマシェがマーシャンを訪れた。
「久しいのホセ。」
聖獣の子供を膝にのせうたた寝していたホセは顔をあげた
「マシェどのはお変わりない。」
今は白の布で隠されているが漆黒の髪、漆黒の瞳…代々のマシェに引継がれる容貌だ
今のマシェは龍の血が少し濃いらしくジュディと同じとんがった耳をしている
「守人殿は口説きがうまいの。そなたにあった時は妾はまだ若くて力もみなぎっでおった。」
最後にあったのはヒスイに正式に守人を継がせる報告をしたときだっただろうか?
「そんなに月日がたっていたか、日に日に命の糸が見えなくなるわけだ。」
ホセの言葉にマシェが微笑む
「ここに来る途中にベガ殿にあった。どこかのパトロンが突然できた闇渦にのまれたと言うておったが守人どのはジェリクを抱えて優雅に昼寝をしておられる。」
『アメリ』のパトロンのことか?
王宮からの使いはない
「政治の世界にはもう魔力が不安定な老いぼれはいらないのでしょう。」
昔、紋様の真偽を追求するあまりに無茶をした……紋様じたいはだいぶとりのぞいたが力の減り方は早い
見えていたエナジーの流れが日に日に見えなくなっている
「フォンを送って伝えても良かったが、妾はこれが最後の旅になる。」
フォンはマシェの使い魔だ、龍のような顔に鳥の体をもつ魔物
使い魔が要件を伝えに来る
「後とりを育てていると聞いてませんが?」
「次のマシェはまだ産まれておらぬどころか前王が闇落ちし今の王に変わったばかりで後とりどころではないの。」
マホロボ王が闇に落ちた?
若い時はよく語り合い共にネプチューンを旅した
困っている民をみれば子守まで引き受ける心が広く慈悲深い
それがマホロボ王の印象だった
「ラルゴよりも清い王だったのに……」
「闇の者がマスターの中に入りこんだ。マホロボ様は民をよく見て、民と共に政治を行なう素晴らしいかた…しかしそれゆえに利用されてしまわれた。」
ホセの横に腰をかける
カチカチとまとう魔道具の音がする
ラルゴと言ってしまった自分にホセは苦笑した
一緒に旅して恋の賭け事までした少年が王子だと知ったのは守人を継いでからだ
「今の王は勇敢じゃがやり方が荒い。反発する民も多くてネプチューンは魔術師、技術士で関係にヒビがはいりはじめた。そなたもいかがかな?」
「いただきます。」
マントから出したビンから赤紫の液をそそぐ
ホセがつくった白いコップから甘酸っぱい臭いがたつ
「リラ酒ではないですね……」
「レッドブラッド、オークが好む果実と『ヤマト』で出来る特殊なリラの蜜で作ったものだ。」
オーク……なつかしい。
ホセはにどとオークがいる地はふめないが…。
「これを飲むうちにまたエナジーが見えるようになる一次的にすぎぬが。妾はこれでたもっておったが限界じゃ、『シャドウ』に流れてきた幼子がおってその子が優秀での男だが次のマシェが産まれるまで守番はさせようとおもうとる。」
世界には掟がある
マシェの継承者は王家に産まれる黒髪、黒い瞳の女の子と決まっている
アマリリスの家は一族として受継がれるがマシェは違う
マシェに限界がくれば次のマシェが産まれる
その子はまたマシェに教育される
流れてきた子供が代理といえど役目をおうのははじめてだろう
「もう掟など役にはたたぬ。王が欲に溺れ無能になり今や暗殺の話まででておる。」
ネプチューン王国の話しが入ってこないのは『風の一族』、密偵のような旅する一族が『マーシャン』にこなくなったからだ。
「最近、ナツメ、サンショが率いる一族がこない……」
「王が禁止してるのさ。妾はチョウ狐に乗ってきたから捕まらなかったがネプチューン王国から出たら捕らわれ殺される。風の者は力は強くない……」
「まさか皆殺しに?」
「いや、サンショ殿が殺されそうになった所を『ティー一族』の誰かが助けたようじゃ。」
謎の多い一族であまり他とかかわらない一族
何年か前にあったことがある……盲目の金色の瞳の乙女だった
ラルゴの大罪だとホセは今でもおもっている
龍を落としたホセをねたんで……
「あんたとラルゴが掟を崩した。」
静かに言ったマシェの言葉が染みる
「責任をとれと?」
「精霊を敵にまわしたあんたには何にも出来ないさ。長いしてしまった、妾はそなたに試練を与えにきたのじゃ。今、ネプチューンを覆っている暗黒はネオスにもくるぞ。『メシヤ』でくいとめられなければネオスの王にも影響はでる。これは土産じゃもういちどエナジーの真をみよ。」
マシェが手をふると一匹の獣が現れる
とんがった耳、長い鼻、太いシッポが九本
みかけない聖獣だ
白い美しい毛並みに緑の目
ホセに一瞬牙をみせ、うなった
「気にしなくてよい妾達はアイリスに行こう。」
手助けはしないと……
去っていく九本の尾を見守りホセはため息をついた。