あの丘の向こうで

ガチャ…

家のドアをあけた瞬間、鬼の形相の母親。

「あんたいつも遅いけどどこで何してるわけ!?」

時計を見ると19時を指している。言うほど遅くない。

「…。」

「あんたね、そうやっていつまでも黙ってるんじゃダメなの。ボイストレーニングとかしなさいって。歌手どころか普通の夢にも…」

(もう夢なんてないから。声なんて…出て得するものじゃない。)

そう思いだしたのは、あの事があってからだ。
そんな母を振り切って自分の部屋へ行こうとすると

「ちょっと待ちなさい!雪乃!」

「もう黙って!!!!声なんて出るんだから、ほっといてよ!!!!」

久しぶりに出した声が しん と静まる部屋に響いた。