新学期、僕が高校2年になった春。
いつも通り、一本遅れた電車に乗った僕の目の前には、ひとりの少女がいた。僕と同じ制服を着ていたので高校生なはずだ。果たして高校生は少女なのか、ていうか彼女も遅刻じゃないのか、そんなどうでもいいことを考えながら、僕は目の前の彼女を見つめていた。
透き通った肌、柔らかな長い黒髪、朝の日差しは丸い瞳に差している。
素直に彼女が可愛いと思った。そんな彼女は、こちらに目もくれず、まるで遅刻している素振りも見せず、本を読んでいた。
今どきの学生の殆どが電車で電子機器をいじっているだろうこの世界で、そんなこと全く関係ないように、ただ目の前の字を追っている彼女が、なんだか余計綺麗にみえた。