「どうぞ、乗って」
「…失礼しまーす」
「はい案内して。家どこ?」
「大通りの歩道橋のある交差点を右です」
「了解」

「楽しかった?」
「うん。でもみんな仕事頑張ってるーとか、就活大変だーとか。大変大変って言う割に希望に溢れててやっぱり羨ましかった…」

「そうかぁ、結衣ちゃんは、何かないの?したいこと」
「私…?」
「うん」

「働くのはきっともう無理だから、何かゆうちゃんの役に立つ事がしたい」
「役に立つこと?」
「うん」

「いいねぇ…愛されてる男は。羨ましいよ」
「えぇ?ゆうちゃんが?」
「うん」
「なんで?」

「男ってさ単純だから。何もしなくていいんだよ。側にいて、おはよう。おやすみって言ってくれるだけで。少なくとも俺はそうだけどな」

難しいような…簡単なような…中岡先生の言葉はなんとなく私の心に響いた。