キミの願い

結衣とお母さんの鼻水をすする音しか聞こえない部屋にノックが響いた。

「原田先生。開始1時間前です」
「…315の木島さんだよね?」
「はい」
「ごめん。30分前にもう一度知らせてもらえる?」
「分かりました」

「すまない、雄介くん。仕事なんだろ?」
「…まだ大丈夫ですから」

なんとなく重い空気が漂っていた。

「手術の予定が入ってるの?」
「ううん。違うよ、だから大丈夫」

「ゆうちゃんはこのまま、お医者さん続けたら教授とかになるの?」
「教授?すごい出世コースだね」
「悪くないね。教授夫人っていう響きも。ねぇゆうちゃん、パパ、ママ。もうちょっとだけ私のワガママに付き合ってもらえる?やっぱり私、おじいちゃんになったゆうちゃんと、ひなたぼっこしながら縁側でミカン食べたいんだ」
「…じゃあ縁側のある家に引っ越さないと」
「後ね、掘りごたつも」