キミの願い

部屋に再び沈黙が訪れた。

「…結衣。こういうのはどうかな?今日はご両親もいるから一応移植希望の書類を書いて、待機リストに申し込む。申し込んでから移植できるまでに正直どれだけ時間がかかるか分からない。一年かもしれないし、五年かもしれない。その間にゆっくり考えればいい。それでももし、結衣が希望しないというなら待機リストから外す手続きをすればいい」

「ねぇゆうちゃん…お医者さんとして答えて欲しい。移植を受けなかったら後どれぐらい生きれるかな?」
「…それは、余命ってこと?」
「…うん」

「…そんなの分からないよ。もしこのまま心臓の機能が弱まって生命を維持できなくなれば2〜3年かもしれないし、もう充分だと言って全ての治療を止めれば一年持たないかもしれない。
でも根気強く治療し、移植が出来れば何十年もある。
余命なんて結衣次第で短くも長くもできるんだよ。医者は患者が決めたことに従う。
延命治療を望むならあらゆる手を尽くす、望まず安らかに旅立ちたいと言うなら、せめてもの思いで痛みを和らげる方法をとる。

でも僕は結衣にとって医者である前に夫だよ。
何十年も連れ添った老夫婦ならまだしも、人生これからだっていう妻の治療を望まないはずがないだろ」