薬の影響もあるのだろう。まだ唇にチアノーゼは出ているけど、眠る結衣の顔を見るとホッとした。

「ずっと付いてて下さったんですか?」
結衣の側にいた女性に声をかけた。
「あっ、はい」
「妻がいつもお世話になっております。今日も助けていただきありがとうございました」
そう言って頭を一度下げた。

「あっ、ご主人様ですか。上司の田所と申します」
「田所さん。妻がご迷惑をおかけしました」
「いいえ迷惑だなんて」
僕が医者だと知らない田所さんは説明してくれた。

「先生は呼吸困難だって言ってたんですが、よく分からなくて…でももう大丈夫だそうです」
「ありがとうございました」
「いえ…でも人があんなに苦しんでる所、初めて見て正直びっくりしました。何もできなくて…」

「救急車を呼んでくれた。それだけで十分です。今日はもう私が付いてますので」
「そうですか…あまり無理せず休養するように伝えて下さい。では失礼します」
田所さんはそう言って帰って行った。