中庭の桜が満開になった。
チラリ、チラリと散りながら、それでも桜は惜しみなく綺麗な姿を僕らに見せてくれる。

「本当によく頑張ったね結衣ちゃん」
「中岡先生ありがとうございました。先生のおかげで今の私がいるのは事実だから。きちんと伝えておきたかった」
「俺は医者としての仕事をしただけだよ。生きたいと願った結衣ちゃんをほんの少し手伝っただけ」
「その少しがなかったら、きっと今ここにはいない」
「あー…ったく。年とると涙腺が脆くなる」
目頭を押さえる中岡を横目に車に荷物を積み込んだ。