外科病棟に戻ってから、結衣の経過は順調だ。
今日は30分ぐらい座ったよ。
ご飯も全部食べたよって嬉しそうな顔で報告してくる。

結衣の笑顔を見るたびに手術ができて本当に良かったと思う。
もう少しでこの笑顔が僕の側からいなくなる所だったなんて、今では考えられない。

頑張る結衣を側で支えていたいと思うのに、僕はこの大切な時期に何をしているのだろうか。

医局で仕事をしていたけれど、どうにもこうにも頭が回らない。
病院で働いていると免疫や耐性と言うのは知らず知らずのうちに備わっていく。
けれど医者も人間だから体調を崩すこともある。

しかし、今回は医者としての勘が危険だと自分の中で警鐘を鳴らした。
幸い今日はオペの予定も無い。
院内用のピッチで知り合いの内科医のアポを取った。

「川本先生、しばらく出てくるから後頼むね」
「え?あっ、はい」