差し出された中岡先生の手を掴むとグイッと引っ張られ寝ていた体は無事に起き上がったのに座れず前のめりになってしまう。

「まずはここ。腰の筋力だって低下してるんだから体を支えられない。徐々にでなきゃ。これが今の状態なの、分かる?」

座る事さえできないと言う現実を知ると同時に言葉尻を強く言われ、さすがに凹む。
それに中岡先生を握る手に力が入るのが自分で分かる。それは頭の中がグラグラ揺れてきたから。

「ホラ、目眩するんでしょ?大人しく従いなさい」
そう言ってベッドに戻された。
閉じていた目を開くと少し呆れた顔の中岡先生がいた。
「もう一度言うけど、今日はここまで。分かった?」

2人がいなくなり静かになった部屋。
だけど今までと少し違った景色が見えるから先生の言う通り今日はこれでオッケーにしておこう。後は焦らずゆっくりと…

それから日を追うごとにベッドの角度をつけ、少しの間ならそのまま座れるようにもなった。
後は食事にも変化はあった。
ドロドロの原型さえないお粥だったのに少しお米の粒が分かるぐらいになった。

ちょっとずつだけど回復しているのが自分でも分かる。