キミの願い

「…よし、オッケー。動けよー。人工心肺離脱して下さい」

中岡の声により結衣の体から機械が外された。
移植された心臓がきちんと拍動するかどうかの瞬間はさすがに緊張する。

「よし!原田先生…」
「…うん」
中岡と目が合った。
心臓は新しい主人となった結衣の中で静かに動き始めた

「いいじゃん。よしラスト行こう」
「…ん」

ここまで来れば後はきちんと閉じていくだけだ。切断された胸骨を固定していく。
体の中心に入れた20センチほどの切れ込み。

「原田先生、最後。先生が縫ってあげれば」
中岡の提案を受け、僕の手で結衣の傷口を縫合する。
結衣、本当に頑張ったね。
最後の糸を切り握っていた器具を置いた。

麻酔科医により結衣の状態が知らされ、麻酔も外され全てが終わった。
5時間で予定されていた手術だったけれど、カウンターは5時間40分を示していた。