未だにお母さんは僕のことを先生と呼ぶ。

「ママ」
「結衣…移植決まったのね」
「うん、そうみたい。パパは?」
「仕事。でも早退して来るって言ってたわ」
「そうなの?忙しいのに…」
「仕事より、結衣のことよ」

すると今度は中岡が入ってきた。
「皆さんお揃いですか?あっ、お父さん?」
「主人は仕事で遅れますが後から来ます」
「そうですか。時間がないんで説明させてもらってもいいですか?」
「はい、お願いします」

「移植協会のコーディネーターと連絡とりました。この後15:10に先方の方で手術が始まります。この病院にドナーの心臓が届くのが16:30です。
ですのでこれから結衣ちゃんには麻酔を効きやすくする為の点滴を開始して、14時過ぎにはオペ室に入ってもらって14:30には開始します。

執刀は私、中岡が務めます。第一助手に原田、第二助手に川本の医療チームで進めます。
すべての手術にかかるのが約5時間を予定しています。
矢継ぎ早な説明になりましたが何か不明な点はありますか?」