汗ばんでいた前髪をかきあげ流れていた涙を拭いた。
「…ぅちゃん……」

そのまま結衣は意識を失うかのように眠りに落ちた。
体力の限界を超え目を開けることさえ出来なくなったと言った方がいいだろう。
今まで遊んでいた子供が次の瞬間には寝ていた。それに近い感覚。

「個室に移動しようか」
中岡が言うので僕は寝ている結衣に話しかけた。
「結衣、ベッド動かすからね」

ナースステーションから程近い部屋に結衣は移動してきた。
結衣の手を握る僕の肩を中岡は無言で2度叩き笹先生と一緒に出て行った。
酸素マスクと心電図モニター、血中酸素濃度を測る機械を付け結衣は眠っていた。