トイレから出て、心配そうな表情の男が「大丈夫?」と聞いた。 「ごめんね。大丈夫」 「もうホテルに戻った方が良くない? 俺、送るよ」 「いや、本当に大丈夫だから」 しかし、男はもう荷物をまとめて、トレイを返却口に戻している。 「ほら、行くよ?」 キミは言われるがまま、席を立った。嘘がいよいよバレるのだと、動悸のようなものを感じた。しかし、吐いてしまえば楽だということも知った。キミは男の後を歩き、さっきの交差点の前まで来て、正直に白状した。 「ごめんなさい。本当はホテルなんかないの」