ハンバーガーショップに入り、階段を降りて席を確保する。店内は空いていて、キミたちの他には、新聞を読む50代くらいの男性が一人と、ブラウスを着て、本を読む20代くらいの女性が一人。男がキミに「何がいい?」と聞いた。
「一緒に行くよ?」
「いいよ。待ってて。席取ってて欲しいし」
「でも私、何食べたいか決まってない」
「それもそっか。うーん」
と辺りを見回した男。50代くらいの男性と男の目が合って、50代くらいの男性が軽く会釈をした。
「荷物、置いていこっか」
男と階段を上り、レジに着くなりキミは、チーズバーガーのセットを注文した。キミは本当にすぐに嘘をつく。支払いは男が済ませた。キミも出そうとしたが、男は「いいから」と言って断る。
トレーも男が持ち、席について食べる。会話はない。お互いに黙々と食べる。何か話さなければと話題を探していたキミ。対する男は別のことを考えてそわそわとしていた。男には悪いが、そうしてもらうようにした。
男が早々と食べ終え、ワードプロセッサーを出して、仕事に戻った。キミは慌てた。早く食べなければというプレッシャーを感じていたのだ。そういえばキミは誰かと食事をするのが苦手だったね。そんなこと、すっかり忘れていた僕は、この無駄でしかない時間を早く終わらせるために、男に早く食べてもらったわけだけど、誤算だった。
キミは案の定、慌てて早く食べようとする。しかし、焦れば焦るほど気持ち悪くなる。ドリンクに手を伸ばすが、空っぽ。夏の暑さを冷ますほどしかない空調。それが効かないほどの暑さが襲う。いよいよ気持ちが悪くなる。席を立った。
「どうしたの?」
という男の言葉を振り切って、キミはトイレに駆け込み、嘔吐した。額や脇からひんやりとした汗が流れ、怒り肩をストンと落としてため息をついた。
これに関してだけは本当に申し訳なかったと反省している。これに関してだけは。



