キミがあの男に会いにいくことは、当初の僕は望んでいなかった。


にもかかわらず、一夜明けて、僕はキミをあの男の元へ送り出した。しかもわざわざ起こしてやって。


これにはもちろん、アリスは怒った。


「ちょっと、ケン! いるんでしょ? ケン!」


「僕の中にいるのはキミの方だよ」


「そんなことはどうでもいい。あなた、あの女に復讐してくれるんじゃなかったの?」


「もちろんそのつもりだよ」


「つもり?」


「語弊があるね。必ずしてやるさ」


「ならどうしてあの男にあの子を会わせたのよ! まさか、昨日のバグ。あれもあなたが仕組んだことなの?」


「それは違う。本当に想定外だったんだよ」


「ならどうして会わせるようなことを……」


僕はリビングチェアに腰掛けた。