「こんな生活…いつか破綻するの分かってたのにな…。」

私はこの世界の住人ではない。約10年前にこちらの世界に逃げてきた。

逃げてきた…というには語弊があるかもしれないが、別に犯罪者だとか誰かに追われて…という訳ではない。自発的にこちらの世界にやって来たのだ。

要はただの家出だった。

私はあちらの世界では稀有な存在だった。膨大な潜在魔力量を保持し使えない魔術は無いと言われ…世界で数人しかいない、攻撃魔法と治療再生魔法が使える、天才魔術師だと言われていた。

生まれた時から膨大な魔力持ちの私は、夜泣きをすれば台風を起こし、悲しいことがあれば大雨や大洪水を引き起こしていた。

私の存在に怯えたのか、疎ましく思ったのか、両親は私が4歳の時に国の魔術師団に私を引き渡した。

私は親から『いらない』と言われた子供だったのだ。

その当時はそう思っていた。思い込んでいた。ただ…この世界で10年弱生きてきて分かった。

そう…親だって怖かったはずだ。自分の子供なのにすでに高位魔術を扱える赤ん坊。怖くて…相当恐ろしかったに違いない。

実の両親には申し訳なかったな~と今でも思う。相当手を焼いて扱いに困って国にお願いしたのだろうし。

そんな私は当時は親に捨てられた…とこの世を恨み、親を恨み、どす黒い魔術を外に向けて発している…こちらの世界で言うところの『魔王』のような存在だったに違いない。

やがて私は魔術遮断の檻(魔術師団の寮)の中で、魔術師団の先生達から教えを受けて、独りぼっちで新魔術式の開発や魔法薬の開発…などを細々とするだけの日々に落ち着いた。

そう…落ち着いて見せていた。