「勇樹から…怪我の事、聞いた?」

マホチャンはそう切り出した。私が頷くとマホチャンは深く息を吐き出した。

「私さ…26なのよ、勇樹より上。正直結婚もチラチラ考えてたのよ。」

おお…マホチャン…もとい、マホお姉さんは目上の方だったのか。チンチクリンなんて言ってすみません。

「いい子ぶるつもりもないし、ぶっちゃけると車椅子の彼氏なんて…ましてや旦那なんてどうすりゃいいのよ?介護?はぁ?みたいな感じ…。」

嫌味っぽい言い方をしているけれどマホ姉さんの魔質は暗いままだ、相当ショックだったみたいだ。

「私の未来っていうか、先の生活に車椅子の彼氏の面倒を見れる余裕があるか?って聞かれたら無いわ…というしかなかった…。ねえ、私おかしいかな?」

マホ姉さんそれ、元カノの私に聞きますか?

「そうですね…私は勇樹との未来を描いたことが無いのでよく分から…。」

「ええ?あんた高校の時から付き合ってて…それでなかったの?」

マホ姉さんはびっくりしたのか結構大きめの声を上げた。

そりゃあ驚くよね?今考えても未来の自分と勇樹なんて想像もしてなかった。先の先なんて考えてなかった。心のどこかで『帰る自分』を常に意識していたからだろう。

「そんな私の事、勇樹には見透かされていたのだと思います。」

マホ姉さんは何とも言えないしょっぱい顔をして私を見ていた。

「私、どうしようもない彼女でしたね。大切なものが何もない…。」

マホ姉さんはちょっと座り直して私に近づいた。

「勇樹はあなたの話を職場じゃしなかった。だからこそっと待ち受けであなたの写真を見たことあるの。綺麗すぎてびっくりした。」

そう…かな?

元々の造作のままで黒髪に黒目に見える様に魔法を使っているから、ハーフか外人顔だよねと言われることは多いけど…。

「こんな綺麗な人でも…そうかぁ…。で、あなたはどうするの?…私は駄目だけど…ごめんね。」

マホ姉さんも何に対してのごめんね、ですか?色々含むのごめんねでしょうか?

マホ姉さんはサッと立ち上がると、ピョコンと頭を下げた。

ちょっと泣いている…。泣きたいのはこっちだっつーの。