そう…心の何処かで、やっぱりな…と思っている。いつかは帰らなくてはならない。こちらの世界が居心地が良くて、このままずっと…なんて甘く考えていた私のせいだ。

私が周りにいる全ての人を欺いて騙していた罰だ。

「もう…やめよう。」

自分の住むマンションに駆け込んだ。実は勇樹のマンションとは歩いて2分程の距離だ。益々勇樹の馬鹿さ加減に腹が立つ。

こんな距離で浮気相手を連れて歩いてたら私に目撃されるじゃない!

……あーーっ!もしかしてもしかして、ワザと見つかって私から別れを切り出して欲しかったとか?あり得る…あーーーっやだぁそれもやだなぁ…。

そんな近い距離で別々に住んでるなら同棲すればいいのに〜と、勇樹のお母さんに何度も言われていたのを思い出した。こうなって見れば同棲してなくて良かった。逃げ込める場所が浮気現場なんてどこに逃げりゃいいのよ。

「ひぃ……ん…ぐすっ…。はだみずがどまらがい…。」

玄関で靴を脱いで、後ろを振り返る。

あいつ…やっぱり追いかけてもきやがらない……ふんっ!

こんな別れ珍しくもない。よくあることだ。勇樹とは高校生の頃からの付き合いだ。もう9年になる。高校生の恋愛がそのまま大学まで続き、そして社会人になっても続いていただけだ。

ただの腐れ縁のただの恋人同士で、浮気されて別れるだけだ…たったそれだけだ。

だが勇樹のお母さんの聡子さんとは仲良くして貰っている。お母さんから、いつお嫁に来るの?まだなの?会う度に聞かれていたけど…ごめんね、聡子さん。お嫁には行けなくなりました。