勇樹が事故…聡子さんから聞き出した所によると、大きなトラックにはねられたらしい。勇樹は青信号で横断歩道を歩いていたのでトラックの前方不注意のようだ。

意識は戻ったが、まだ予断は許さないらしい。聡子さん曰く、面識のない女の子が面会に来ていてどうやら彼女みたいらしいことと、私と別れたことを知らされていなかったことが癇に障っているらしい。

私は自分の家の玄関の下駄箱の下の隙間にコンビニでコピーしてきた先日描きだした魔法陣の複写した紙を入れると、魔術を発動させた。

これもすごいことなのだが、魔法陣もコピーして何枚でも複写出来るのだ。文明の利器って怖いね。

これでほぼ痕跡を消せた。

樫尾のご両親は私の事を忘れるはずだ。玄関先で靴を履くと誰もいない室内に頭を下げた。

「お世話になりました。」

今は勇樹の事故の知らせを受けて、心が散り乱れている状態だった。気を抜けばへたり込んでしまいそうだ。暫く玄関先で迷ったが…よしっ。

意を決して転移を開始すると、勇樹の実家の近所に降り立った。

恐らく聡子さんは今は勇樹の入院している病院のはずだ。このまま聡子さんの帰りを待とうか、どうしようか…。いや、こっそりと祐樹の様子を見に行こうか?でも浮気女が一緒に居るのを見ると、まだ腹が立って腹が立って…とてもじゃないが暗黒魔法をぶつけてしまいそうになる自分を止めれない…と思う。

電柱の影で不審者の如く聡子さんの帰りを待ってみたが、中々帰って来ないので、心の中で謝りながら勇樹の実家の玄関先に転移し、そこにも記憶誘導魔法の魔術陣のコピーを置いてきた。

これでほぼ関係者の記憶から樫尾 莉奈の存在は消えたはずだ。

しかし予定外のことが起こってしまった。このまま異世界に帰ろうか…と思っていたが気になって仕方がない。

今更会うのも辛いし…でも心配だし、様子だけでも…。私は勇樹の魔質を探った。