勇樹を抜き去って颯爽と歩いていると、勇樹の馬鹿が私に気が付いたようだ。急に速度を上げて距離を詰めてきた。

何の用だよっ!ヒョロッと野郎っ!私は勇樹の足に加重魔法を使ってやった。簡単言うと足を重たくする魔法だ。もっと簡単言うと…嫌がらせ魔法だ。

途端に勇樹の足取りが遅くなる。あはは~ざまあみろ!電車に乗り過ごしてしまえっ!遅刻してしまえぇ!

……虚しい。

私はホームに着くと、勇樹の魔法を解術してあげた。こんな嫌がらせをするなんて大人げない。

私は自身の体に魔物理防御障壁を張ると満員電車に乗り込んだ。

何故、魔法障壁を使ったかと言うと…痴漢防止の為だ。私の場合、障壁越しにしか触られないし…こちらで痴漢だと分かった時に雷魔法と腐食魔法を犯人に使ってやるのだ。

痴漢の手を痺れさせて爛れさせてやるのだ。勿論、痴漢を目撃&魔力で感知することも怠らない。遠くの車両で憎き行為をしている変態には魔法をぶつけてやっている。

自分の魔力の及ぶ範囲しか悩める乙女(たまに男子もいる)を助けることは出来ないが、自分の出来る人助けだと自負して『自称痴漢撲滅隊員』を心の中で名乗っている。

犯人を捕まえればいいのでは?と思われそうだが、そこまでこの世界の司法の中に自分の存在を知らしめしていいのか悩んで今のスタイルに落ちついたのだ。

こういう中途半端な正義感が一番始末が悪いんだよな…。

また鼻の奥がツーンと痛み出した。あれから涙腺が弱い…。暫くこうやってめそめそしちゃうのかな…。

そう思いながらも時間は過ぎている。会社でも引継ぎ作業は順調だ。

今日は週末だ。

約束通り、山田先輩と呉川さんが飲みに連れて行ってくれた。