あなたの隣～憧れ先輩と営業外回りペアになりました～

運転席の外に立ったままの私に先輩は「早く乗れ」と声をかける。

私は助手席に向かう速さをゆっくりにした。それはこの先輩との時間が少しでも長く続いてほしいと思ったから・・・ささやかな抵抗だ・・・。

私が助手席に戻ると先輩は私が変えていたミラーの位置を直していた。

準備ができたら帰るのかな・・・

切なさを隠しながら目の前に広がるきれいなまぶしい景色を見る。

穏やかな波が揺れるのを見ながら時が止まってしまえばいいのにと念じながら最後の抵抗を試みた。

「行くぞ。シートベルトしろ。」
「・・・はい」
最後の抵抗もむなしく先輩はハンドルに手をかけている。私はなるべくゆっくりシートベルトをした。すると、
「早くしろ。遅れるだろ？」
と先輩の声が私に向けられる。