私も先輩に負けじとタイピングを始める。
「お前、最近生意気だな。」
「そうですか?」
先輩の言葉に私がそっけなく返事をすると、先輩は机に置いたばかりのコーヒーを私の机に置いた。
「え?」
私が手を止めて先輩を見ると先輩は再びタイピングを始めていた。
「なんですか?」
「ご褒美」
「え?」
「先週は一度も警報ブザー鳴らさなかったからな」
その言葉に私は頬を膨らませる。
「・・・・ありがとうございます」
でも知っている。嫌味くらいの言葉でも先輩にとってはその時最高の誉め言葉だったりするのだ。
その証拠に先輩の頬がいつもよりも少し緩んでいる。

先輩とペアになって一か月しないうちに私はそこまで先輩の表情を観察して察知できるようになっていた。