「帰りは父が迎えに来てくれるんで。」
ついでにもう一つ予防線を張っておくことにした。

私がしつこい先輩に断りをいれると、給湯室から先輩が戻ってきた。
両手にマグカップを持っている。

「モテますね。」
「は?」
私の言葉に先輩は冷たい表情で答える。
そして何もなかったかのように席に座った。
「お前、コーヒーってブラック派?」
「苦くて飲めません。ミルクたっぷり派です。」
「砂糖は?」
「砂糖は普通派です。」
「へー。」
気のない返事の先輩はもうパソコンのキーボードをものすごい速さでタイピングしている。
「先輩は?」
「俺はブラック派。でも時々甘いのも飲みたい。」
「わがままですね」