「考えておきます。」
「えー。今考えて。」
本当にしつこい。

どうやってかわそうかと考えていると心平先輩が席を立ちあがった。
助けてくれるの?!

思わず期待する目で先輩に視線を送ったのに、先輩はさっさと席を立ち給湯室へ向かって行ってしまった。
すかさず、女性社員が皆席を立ち、我先に先輩にコーヒーを淹れようとしているのが目に入る。

正直あそこまで先輩に対して積極的というか、頑張ろうという気持ちは今の私にはない。
先輩の優しさに触れて気持ちを錯覚しているだけかもしれないとも思う。

勤め始めてまだ一カ月もたっていない私。今は私の中で仕事が占めている心と体の割合がかなり多くてそれどころじゃないと、自分で自分の気持ちにストップをかけているのもあった。

「すみません。あまり遅くなると両親が心配するんで。」
嘘も方便。私は一人暮らしなのに、家族と同居していることにしてその先輩に断りをいれた。