そのあとの記憶はかなり薄い。

陣痛が10分間隔を切った私は心平の運転で産婦人科へ向かうとすでに子宮口が8センチ開いていた。初産にしては進みが早いかもしれないとすぐに分娩室へ移動し、すぐ破水して急速にお産は進み、病院についてから5時間で出産を迎えた。

そのあと、私は出血が止まらず血圧が急激に低下してしまい意識を失い、赤ちゃんとの対面はお産から8時間が過ぎてからだった。

目が覚めるとすでに個室に移動していて、あたりは暗くなっていた。

ベッドから目を開けてあたりを見渡した時、一番に目に入ったのは生まれたばかりの小さな小さな赤ちゃんを抱いて何やら話かけている心平の姿だった。

「ちっさいなー。・・・パパだぞ?・・・泣くのか?・・・お、目開くのか?」
その表情は今まで見たことのないくらい優しい表情だった。

あー。この人をパパにすることができたんだ。
そう思った時、自然と涙が流れた。