慌てて私が起き上がろうとすると心平が起き上がるのを止めた。
「寝てろ。」
同時に田口が先方には連絡したことと石崎部長が代わりに何軒か回ったり、ほかの社員に割り振ってくれたと教えてくれた。
「ごめんね」
田口に私が謝ると心平も一緒になって田口に頭を下げる。
「妻がご迷惑をおかけしました。」
「いえいえ。先輩にはいつもお世話になってるんで恩返しです。つる並みに。」
田口の独特の言い回しに心平は笑いながら
「表現が独特すぎて、知佳に似てる。」
といった。

「あとは大丈夫だから、仕事に戻って。ごめんね。」
私の言葉に田口は自分の仕事へ戻った。

医務室から出ていく田口を見送ってから視線を心平に移すとその表情は険しかった。
「無理すんなって朝言ったよな?」
「ごめん」
「午前で11軒回ったって聞いた。」
元営業経験者にはその軒数がかなり無茶な数だとわかってしまう。
「ごめん。キャンセルできなくて」