「知佳・・・知佳?」
遠くから何度も名前を呼ばれて重たい瞼を開ける。やけにまぶしく見える景色に私は何度も瞬きを繰り返した。
「知佳?」
優しく呼ぶその声は私の旦那。桐谷心平の声。この声を聞き違えるわけがない。

私は何度か瞬きをしているうちにはっきりとしてきた意識の中でその声の方を見た。

心配そうな顔で私の顔を覗き込んでいる。
「?」
ここはどこ?私はだれ?状態で心平を見ると心平は私の頭を撫でた。
「医務室だよ。お前急に倒れたらしくて、田口君が運んでくれたんだ。」
視線を少し変えるとそこには同じく心配そうな田口君の顔が見えた。

「朝から顔色悪いのは気になってはいたけど、無理しすぎだ。病院行こう」
「先輩の荷物持ってきましたから」

私の記憶の中では確か午前の営業が済んで社に戻り、午後の準備をし始めていた。
「午後の取引先に連絡は!?」