「お父さんのことは残念だったな。」
「・・・お気遣いありがとうございます。その節は長期休暇をいただいてありがとうございました。」
「それでも営業成績が上位に入っていた須藤の努力を俺はかってるぞ。がんばれ」
「はい」
父は母と一緒に暮らし始めてから一年後にがんが再発した。気がついた時にはすでに余命2カ月ほどで、私はその期間仕事を休み実家に戻った。
父と母と私とおばあちゃん。今までの人生で一番長く私は家族の温かさを感じながら過ごした。
きっと父も母も同じ気持ちだと思う。父は入院はせず、自宅で息を引き取った。
最後の最後まで笑顔が絶えない時間。父が亡くなってからも母も後悔なく、笑顔で送ることができた。

「須藤ちゃん」
私は部長の席から出てすぐに緑先輩に呼ばれた。
「はい?」
先輩は昨年結婚して現在妊娠中だ。
「これ見た?」
「?」
そう言って緑先輩は私に社報を見せる。