知佳へ

今、知佳が隣でぐっすりと眠ってる。今日は最後のデートだったから、かなり気を張ってたんだな。今朝、石崎課長からの電話でニューヨーク行きの話を聞いた。その時に知佳はもうその話を知っているとも聞いた。俺の予感が当たっていれば、明日、知佳は俺に別れを切り出すんだと思ってる。

ずっと一人で悩ませてごめんな。何に悩んでるのか、わかってやれなくてごめん。

俺は知佳の気持ちも大切にニューヨークへ持っていく。ここまでして俺を送り出そうとしてくれている知佳の気持ちを無駄にはできない。それに何よりも、俺自身が挑戦してみたいんだ。俺自身に。どこまでできるか。

なぁ、知佳。俺は知佳とまた会えてうれしかった。俺自身の人生にすごく大きな大切な変化をもたらしてくれたのは知佳だ。誰も信じることができなかった俺が心許せて、ありのままの自分を見せることができたのは知佳だけだ。だからこそ、もっと俺自身がしっかり根っこをはやして、知佳のすべてを支えられるようになりたいんだ。
待っていてほしいとは言わない。知佳の時間を俺が独占する権利はないから。でも、俺は必ず戻ってくる。知佳を追いかけて。その時、もしもまだ俺を想ってくれていたら、俺がどれだけ変われてるか見てほしい。必ず会いに来るから。でもその時、ほかの誰かに知佳の心が向いていたら笑って手を振ってほしい。そしたら俺も手を振って、もう振り返らないから。

知佳は頑張るっていつも言っていたけど俺に言わせれば知佳は頑張りすぎだ。十分だよ。今のままでも。俺はいつも知佳に追いつけない。どんどんとものすごいスピードで進む知佳に、俺は今も追いつけないままだ。無理しないで。ありのままの知佳を、知佳自身が大切にしてほしい。

体に気を付けて。お父さんとお母さんにもよろしくな。

そろそろ寝ないとな。まだ知佳はぐっすりと眠ってる。このまま時間が止まればいいのにって何回も思った。今日のデート、何回もキスしながら子供みたいに願ったよ。ずっと一緒にいられる未来に変えてほしいって。名案だったろ?敬語禁止ルール。結局願いは叶わなかったけど。この寝顔に勇気もらってる。俺、頑張るからな。

愛してる。

営業外回りペアが知佳で本当によかった。かけがえのない時間だったよ。ありがとう。

心平