「よし、行くぞ」
「うん」
再び先輩は私に手を伸ばした。
その手を取る。
「あったかい」
私がふと言った言葉に先輩が振り向いて一度手を放した。
「風邪。ひくなよ?」
「うん」
そう言って私の帽子を深くかぶせて上着の首元をきゅっとしめた。
「ありがとう」
私は先輩の腕に絡みつく。
こうしているのが一番温かい。
「今日はくっつきむしだな」
「そうかな?」
先輩は再び私の手を握って自分のポケットに入れてくれた。
「あったかい」
「だろ?心があったかいからな」
「・・・それ、懐かしい」
「古いって言いたいのか?」
「・・・少し」
「ばか」
手をつないだまま先輩が私の体をちょんと押す。