涙を見られたくない・・・

「ちゃんとつかまってろよ?」
先輩が私の耳元でささやく。
私は顔を付けたまま頷いた。

「ありがとうございました。このまま連れて帰ります。荷物ありますか?」
先輩が友達から私の荷物を預かってくれた。
「お前、冷たくない?」
先輩がさっき水をこぼして濡れている私の服に気が付く。
「さっき、知佳、水こぼしちゃって濡れてるんです。」
「拭いたんですけど。」
口々に私の状況を説明してくれる友達のおかげで私が何も話さなくても先輩に状況が伝わる。
「ちょっと。」
先輩はさっと自分の上着を脱いだ。その一瞬だけ私の顔が先輩の体から離れる。
「ほら」
先輩は自分の上着を脱ぐと私の体に着せて、フードをかぶらせてくれた。

体の大きな先輩の服。フードは私の顔もすっぽりと隠してくれた。