先輩はそう言って私の体を抱きしめた。

言葉にしなくても隠した心の奥に複雑な気持ちがあることを先輩は知ってくれている。

先輩が夢をかなえる一歩を踏み出せることは私もうれしい。でも。思っていたよりも早い先輩からの独り立ちに私の心は揺れた。

「ありがとう。」
先輩の胸の中で私は首を横に振る。




私たちはそうしてしばらく抱きしめあっていた。


その晩。先輩は私を思い切り甘やかしてくれた。食事を作ってくれたり、片付けまで先輩がしてくれて私が何かを始めようとすると先輩が止めた。

昨日からいろいろなことが重なりすぎて心も体もどっと疲れている私は素直に先輩に甘えることにした。