「急だけど。知佳の両親に挨拶に行きたいって言ったら迷惑?」
「え?」
「いや。ずっと行きたいと思ってたんだ。こうして一緒にいるけどさ。大学卒業して間もない娘を心配してんだろ?きっと。だからちゃんとあいさつに行きたいなと思ってたんだけど。」
「別に心配はしてないと思いますけど、うれしいです。その先輩の気持ちが」
「本当はちゃんとあいさつに行ってから・・・こうして・・・と思ってたんだけどさ。さすがにそこまでできた男じゃないから俺。」
そう言って先輩が私の髪をかき上げる。先輩から営業初日に髪を結ぶように言われてから私は髪を伸ばし続けていてかなり長くなった。
その髪を先輩がかき上げる。
「だめか?正月を外していったほうがいいかな?」
「・・・」
「ん?」
私が答えるまでに時間がかかると先輩は私の顔を覗き込んだ。
「なんだ?のぼせたか?」
そう言って私の体をグイっと持ち上げて先輩は自分の膝の上に座らせるような体勢をとる。
「大丈夫です。」
私が先輩の方を見ると先輩が私の顔色をうかがっていた。