あなたの隣~憧れ先輩と営業外回りペアになりました~

「彼女も来てくれるって知ったから張り切っちゃった。」
そう言って先輩のお母さんはたくさん手料理を作って待っていてくれた。
「嫌いな食べ物はなに?好きな食べ物はなに?飲み物は何がいいかしら。」
いろいろと私の好みを聞くお母さんに私の代わりに先輩が答えていく。

「心平じゃなくて知佳ちゃんに聞いているの。知佳ちゃんて呼んでもいいかしら。私は知佳ちゃんと話したいのよ。娘がいないから私うれしくて。今度買い物行かない?一緒に。原宿とかいってみたいわー。」
マシンガントークのお母さんに私が少し後ずさりしていると
「だから言っただろ?緊張なんてする相手じゃないって」
と先輩がため息交じりで言う。
「緊張してたの?知佳ちゃん。いやーんかわいい」
先輩のイメージとは違ったお母さんに私はきょろきょろと二人を見比べてしまった。
「今似てないって思っただろ?俺、たぶん父親に性格も似てるから。」
と先輩は私に言った。
「そうなのよ。私だけ一生けん命話して。男どもは静かなの。つまらないわー。知佳ちゃんあっちで二人で話しましょ?」
と私は先輩のお母さんに手を引かれてキッチンへ向かった。
私たちの後ろ姿に先輩が「いじめんなよ。5分経ったら助けに行くからな」と声をかけた。