あなたの隣~憧れ先輩と営業外回りペアになりました~

「初めて家に彼女を連れて来たわね。」
先輩のお母さんが私を見ながら話す。
「いらっしゃい。心平の母です。来てくれてありがとう。」
その笑顔はお父さんと似ていると思った。

先輩は玄関を上がりすたすたと歩いていく。
そしてある部屋の前で立ち止まり後ろを歩いていた私に視線を向けた。
「俺の本当の父親にも挨拶してくれるか?」
「もちろん」
先輩が足を止めた部屋には立派な仏壇があってそこには先輩にそっくりな男の人の写真があった。
「俺の親父。」
先輩と並んで私はいっしょに手をあわせた。

「心平にそっくりでしょ?」
私たちを見ていた先輩のお母さんがその遺影を見ながら話をする。
「どんどんそっくりになってきて。」
そう言って微笑む顔にはまだ悲しみを感じる。
そんなお母さんの背中を今の旦那さんがさすっていた。
過去もすべて受け止めているのだと伝わる二人の距離に、先輩も微笑んでいた。