あなたの隣~憧れ先輩と営業外回りペアになりました~

「息」
立派な和風の門構えの前で私は先輩と並んでいた。
あまりに緊張して呼吸すら忘れてしまいそうな私に先輩が笑いながら言った。
「だめかも」
私が手土産の羊羹の入った袋をギュッと握りしめていると先輩が私の背中をばしっとたたいた。
「いった!」
「大丈夫だって取って食うような人じゃないから。行くぞ。」
そう言って先輩が玄関のチャイムを鳴らしてすたすたと先を歩いていく。
私は震える足でついて行った。

「いらっしゃい」
落ち着いた男性が玄関で向かい入れてくれた。
「ただいま」
先輩がその人に向かって微笑む。
「俺の父親。」
「初めまして。須藤知佳です。突然お邪魔してすみません。」
「とんでもない。ゆっくりしていきなさい。」
穏やかな笑顔が印象的なその人は優しそうな人だった。