あなたの隣～憧れ先輩と営業外回りペアになりました～

「いつも見られているような気がして、本当の自分隠してさ。心の中でみんなのことあざ笑ってた。お前たちは本当の俺を知らないだろって。本当の俺はこんな奴じゃないんだぞって。最低だろ。性格悪いだろ。でもさ、本当の自分を出せる相手かもしれないって思うたびに相手が求めているのは俺の外枠だけなんだって思い知らされんだ。」
いつも注目の的だった先輩。何かあるとすぐに学校中の噂になっていた。一緒に並んで保健室へ向かった時のことを思い出した。あの一瞬だって私は苦痛だった。注目されて、何かひそひそ噂話されて。それがずっと続いているんだ。
「俺自身の弱さなんだけどな。距離取って自分で予防線はるんだ。そうすれば期待することも希望を持つことも、がっかりすることも落ち込むこともない。偽物の自分を造り出していつも人と距離とってた。だから友達も少ないんだよ。俺。」
私は先輩の孤独にも初めて触れたような気がした。

私は必要なものと不必要なものを分けられずなんでも持ち歩いてしまう。でも先輩は選別作業が得意だ。それは今までの人生の中で自分にとって本当の自分を出せる相手かどうかを選別して、失敗してきて培われたものなのかもしれない。

「覚悟って？」
「ん？」
私は先輩の言った覚悟という言葉が気になっていた。