あなたの隣～憧れ先輩と営業外回りペアになりました～

「俺の本当の姿を受け止めてくれる人って少ないんだよ。」
「え？」
「お前が歓迎会の時に俺は普通の人間だって言ってくれたの、覚えてるか？」
「・・・？」
「あの言葉が俺、うれしかったんだ。」
私は自分の記憶をたどった。

そういえばトイレに行こうとしたときに女性職員に囲まれて私が確かに先輩のことを普通の人間だって話したことを思い出した。私も、高校生の時はこの世にこんなに完璧な人が存在するのかと思っていた。でもそれは本当の先輩を知らずにただうわべだけの姿や人のうわさで勝手に思い込んでいただけなんだ。

先輩は完璧な人なんかじゃない。苦手なこともたくさんある。でもそこを見せないように自分で努力している人なんだ。それに時々セットした髪に寝ぐせがついていることだってある。ムースで固めているけど。コンビニに一緒に行けば何を買えばいいか悩んでなかなか決められない、優柔不断な姿だってある。

「俺ってこんな人間なんだ。ダメなとこもかっこ悪いとこもいっぱいある。」
先輩は思い出のノートをめくりながら話す。