ずっと閉じていた瞳には夏の強い日差しが痛いほどに感じて、うまく目を開けられずにいると
「なんだ、生きてんのか。」
とその低い声が再び聞こえた。

この口調は先生じゃない?

そんなことを考えながら何度か瞬きを繰り返すと、そこにいたのは・・・

学校で一番人気の桐谷心平先輩が私の顔を覗き込んでいた。

「生きてます!」
まぶしさに慣れた目を開けるとそこにはジャージ姿の心平先輩がいた。
あー汗をかいている姿も神々しい・・・

これで学年で一番頭がよくて、しかもものすごく優男っていう噂。
高校に入学してすぐその噂を耳にした私は、この世に”完璧”といえる人間が存在したのだと知った。

でも、高校1年生と高校3年生が関われることってほとんどといっていいほどない。
まして心平先輩は部活をしていないし、接点を持つことは極めて難しかった。