あなたの隣～憧れ先輩と営業外回りペアになりました～

「おい！」
その時先輩が琢磨を後ろから呼んだ。琢磨が振り向くと先輩は思い切り琢磨に飛び蹴りした。

その勢いで私の手首をつかんでいた琢磨の手が離れる。

先輩はとっさに私の体を自分の体の後ろに隠すようにした。
「悪い、遅れた」
息を切らしながら先輩が琢磨を見たまま言う。

私は思わず震える手で先輩のスーツの裾を握った。
「もう、大丈夫だ。」
その言葉にほっとしたのと怖かったのとで涙があふれて止まらなくなった。
先輩は自分のスーツの裾を握っている私の手を自分の手で握ってくれた。

「あんたがいないからすぐにピンと来たんだよ。」
先輩は琢磨を見たまま言う。
「須藤の様子はおかしいし。ジャケットの袖から包帯見えてたし。警戒してるときにあんたが打ち合わせにいないからすぐにわかった。あんたの会社には事情を全部説明してある。警察も呼んであるし。ここは監視カメラが多いエリアだ。証拠もそろってる。」